クロラッパタケのコロッケ
うわ~、スゴイですね、前の記事書いてからもうこんなに経っていたのですね。
今回はその筋金入りの怠惰による沈黙を破るくらい衝撃的なキノコの味を体験してしまったので、その感動を忘れる前に書き記しておきたいと戻って参りました。
それは、、、、
これです!
クロラッパタケのコロッケ。
クロラッパタケ、日本ではあまり利用されないという表記もありますが、実は結構人気のあるキノコです。英語圏ではブラックトランペットの他に「貧しい人のトリュフ」という別名も持つようです。とは言うものの、高級スーパーマーケットなどで売っている乾燥ブラックトランペットのお値段は、そりゃトリュフよりは安いのだろうけど、いや~、貧しい人は買わんだろーってくらいにはお高いですね。
私は残念ながらトリュフを食べたことがないので味が似ているのか否か判断できません。トリュフとどれだけ味が似ているのかは知りませんが、クロラッパタケそのものが良い香りを持つのは確かです。
私には甘~いフルーツのような香りに感じます。アンズタケの仲間なので、その系統の香り。しかし香りの強さはクロラッパタケのほうが強いのではないでしょうか。
アンズタケ系の香りは、感じられる人と感じない人がいるようで、それはもうどうしようもない残酷な事実で、感じられない人には残念ですねと言うしかないのですが、そんな人でもクロラッパタケの香りは感じることが出来るという人がいます。
もともと香りの良い食材でも、料理方法によっては香りが飛んでしまいつまらない結果になってしまうことがあります。アンズタケやクロラッパタケもそんな食材。
乾燥キノコにして取っておいても良い香りがちゃんと保たれる反面、調理時に火を通しすぎるとその良い香りが失われてしまう。
そんな繊細な食材、昨日、思いついて冷凍して取っておいたのを刻んでコロッケに入れて揚げてみたんですよ。そしたらですね、一口噛んで、ウホッ!!!っと思うくらい強い香りが溢れてくるんですな、コレが。
これ、クロラッパタケの一番美味しい食べ方じゃないだろうか。
ここまで持ち味の香りが強調される調理法、他に知らない。
いや~、感動しました。マッシュルーマーやってて良かった。
クロラッパタケそのものを単にソテーして食べるのもありですよ。
しかし、身が薄いし歯ごたえが良いわけではないしモリモリ食べるほど量が稼げる形態でもないので。
つまり、クロラッパタケは香りを食べるキノコだと思うわけです。少なくともワタシの中の位置づけでは。で、コロッケがその目的にすごく合ってる。ということを昨日発見した。コロッケ開眼。
アレですね。コロッケって、食材をジャガイモという淡白な基質と衣で包んで香りを封じ込めた状態で調理されるから、それを歯で崩した時に閉じ込められた香りがブワッと出てくるんでしょうね。。。
香りが重要な他の食材にも応用できそうです。松茸とか…
因みにクロラッパタケ、多分厳密には近縁の幾つかの種類がブラックトランペットと総称されているようです。しかし、厳密に見分けることは結構難しく、食用としてはどちらも同様に扱えるので問題なし。
小型のモノが多いけれど、群生していることが多いので見つけたら結構収穫できます。
しかし、問題は見つけること。
ご覧の色ですから、これが森の落ち葉の間に生えていると、、、
たまたま日の当たる場所なら、まあ、判る。
でも、日陰になると、
保護色かよ、オマエ…
ってなるのですね。
しかし、同じところに数年間生えてくれるので、一度大きな集落を見つけると、環境が許す限り数年は繰り返し収穫が期待できて、そういう意味でも優良キノコです。
虫も付いていないしね。
タマウラベニタケの大収穫
タマウラベニタケの大群に出くわしたことがある。
森の中、遠目に、一本の大木の根元が白っぽいキノコで覆われているな、古くなった多孔性のキノコかなにかかな、と思って近づいてみると、ブクブクと泡立っている音が聞こえるかのようないびつに盛り上がった形をしたキノコ群が根本をぐるっと取り巻いていた。
その間を縫って、ところどころに傘と柄を持つ典型的なキノコの形をしたものが生えている。
初めは異様な光景にこれが一体なんなのか分らなかったが、もしかして?と思っていびつなキノコと傘を持つキノコをよく見てみる。
両者の形態と一緒に生えているという状況で、これはやっぱりタマウラベニタケ、、、だよな?と思う。
ちょっと赤みがかったヒダを持つシメジ型のキノコ。
傘の表面の感触も知っているタマウラベニタケと同じである。
玉状のキノコをナイフで切ってみると、パフボールのようなスカスカの感触ではなくて、仲間でしっかりみずみずしい肉質。
タマウラベニタケは前にも何度か見たこともあるし収穫したこともあるのだが、それらはいずれも一箇所にせいぜい数本のシメジ型キノコとそのとなりに数個の玉状のキノコという組み合わせが一セットという感じで、こんなに大量に密に樹の根元を埋め尽くして生えているものは見たことがなかったので、すぐには判らなかった。
しかし、一旦タマウラベニタケだと同定できたら、これは大漁・大漁・ホクホクである。
傘とヒダと柄という典型的なシメジ型のキノコ、しかも色も地味なヤツの同定はなかなか難しいが、タマウラベニタケは玉型のキノコを伴っているので分かりやすい食用キノコ。大量に見つかったのは非常に嬉しい。たくさん収獲して持って帰った。
ゴミを払って洗う。
シメジ型キノコの傘は元々ちょっと脆い質で壊れやすかったが、シメジ型のも玉状のもフレッシュで生きが良い食べごろキノコ。
フライパンで炒める。
熱を加えるとシメジ型の方は傘の表面の色が濃くなる。肉質もしっかりする。
一方、玉状の方は切ったジャガイモを炒めた様な感じ。ホクホクとまでは行かないがちょっとポロポロしたような独特な食感。
早速オムレツ風にして食べてみた。
マイルドだが旨味のある優良キノコである。それをこんなにバクバク食べられるほど収獲出来たのはとても幸運であった。これを採ったとき以来、ここまでの大群には出会っていない。次はいつ出会えるかな。
優良キノコも人によってはアレルギー
サケツバタケという優良な美味しい野生キノコがある。英語ではWine Cap。
日本語は柄に付くツバが割けるため。
英語は傘表面の色が濃いものでは赤ワインのような色だからだろう。
特徴的なツバに加え、ヒダの色が紫がかった黒色で特徴があり、他のきのこと間違え難い。
春と秋に採れ、傘から柄まで実が詰まっていて食用になり、味も良い。
木屑の上などに大量にボコボコ生え、一つ一つが大きく育つので、見つけたときには大漁となるありがたいキノコだ。
何年間かは、毎年採っては、炒めてパスタ料理に使ったり、スープに入れたり、そのほぼ万能なキノコを楽しんでいた。
ある年までは。。。。
ある年の春、いつもの様にサケツバタケが大量に採れ、パスタを作りちょうど訪れていた両親にもふるまって昼食に食べたところ、しばらくして吐き気を催してきて全て戻してしまった。私だけが。
4人で食べたのに私だけが気分が悪くなったので、このときはキノコの所為ではないと思っていた。
次にサケツバタケを食べる機会があったときに、それでもちょっとはサケツバタケを疑っていた私は今度は少しだけ食べてみた。
そうすると、果たして、再びしばらくしたら私だけが気分悪くなる。いっしょに食べた人は平気。
一度目も二度目も気分が悪くなると言っても一過性の吐き気で、戻してしまえばあとは引かないし腹痛などもない。
しかし、これでどうも私はサケツバタケにアレルギーになってしまった可能性が濃厚になってくる。
そして、もう一度試してみる。
またしても、、、、、気持ち悪くなる。私だけ。
ほぼ決定だな。
悲しいことにサケツバタケのアレルギー持ちになってしまった・・・
せっかく長期間に渡って大量に採れる優良野生キノコなのに!
キノコの中毒とか毒キノコの報告の中にはこのように個人的なアレルギーによるものも結構含まれいるのだと思う。
そういうのを区別しないで毒キノコ扱いというのは、ちょっと不公平だなとも思ったり。
いずれにせよ、種類によって、また人によって、アレルギーが起こることもあるので、野生のキノコを食べるときにはいつも感覚を鋭くしておくことだ大事だよね。
お宝の山
あまり人に知られないようなマイナーなキノコの良さを見つけるのも楽しいが、キノコハンター達がいつも探し回って遭遇を夢見ているような高級キノコの大群落を見つけたときの喜びは言うまでもなく格別だ。
こういうのとか。
穏やかな茶色の傘と、白い網目の柄。
そして少し傘の開いたもののこれまた穏やかな薄黄色の管孔。
キノコ採りの間では、学名、または、キング・ボリートと呼ぶことが多いが、市場ではポルチーニの名で親しまれ、大きいのを売りに行けば一本20ドルくらいするという。へえ~。
でも、売らないよ。
せっかく大量に見つけたのだから、いろいろな食べ方で楽しむのだ。
色合いも穏やか系なら、こいつは味もかなり穏やかで、トマトと一緒に料理なんかしたらキノコの味は全く分らなくなってしまう。
むしろ一端乾燥させた方が料理中で自己主張する風味が増す。ステーキの上にかけるソースなんかを一端乾燥させたポルチーニの風味を生かしてワインで作ると抜群に美味いんだ。
なんて妄想をしながら、典型的な幼菌の硬さの感触を楽しみ、なるほどさすがシュタイン・ピルツというだけの事はあるねぇと悦に入る。
こんなに大量のキング・ボリートを見つけたのはこのときだけ。あの時は随分と興奮したなぁ。
ど、ど、ど、どこで見つけたの?と、キノコ狩りに興味がある人が問う。
当然、
I'm not gonna tell you that!
と答えるのである。
目玉焼きに最適
腐葉土の上にも芝生の上にも結構いろいろなところに生えているササクレヒトヨタケ。
大群に当たるとかなり嬉しい大漁となる。
ササクレヒトヨタケの味は優良で、スーパーで売っている国もあるらしい。
一晩で溶けるとは言っても、若いものを冷蔵庫で保存する分には一晩以上持つから確かに流通が不可能なわけではない。
ヒダの変色していない白いものをバターで炒め、、、
上から玉子を落として目玉焼き。塩はきつめで。
私にとって、今のところこれに勝る食べ方はない。
ササクレヒトヨタケの風味がどういう風にしてか、玉子の味や風味を強調させ、キノコの旨味自体も加わり、ものすごくリッチな味の目玉焼きになる。
ただの白身の部分のコクが一段と強くなる。
日持ちしないキノコだから、見つけた日の次の日の朝食メニューは自動的にコレに決まるのだ。
私は、ササクレヒトヨタケを料理するときには、洗ったキノコの柄と傘を分けて、空洞な柄の方は指でつぶして裂いて傘よりも先に炒め始める。この指で潰す感触が楽しかったりするんだな。
そして、柄の方が味が濃くて歯ざわりもよく美味しい気がする。
面白いことに、ササクレヒトヨタケを洗ったあとの手は、強いアルカリを触った後の様にヌルヌルする。
一晩で傘が黒くなってとろけてしまうからヒトヨタケ。
傘のとろけた黒い液体状のものはインクの様で、英語ではインキーキャップ。
同属のヒトヨタケそのものに比べると傘の表面が毛羽立っているからササクレヒトヨタケ。
分りやすいネーミングだなぁ。
本家のヒトヨタケは、酒と一緒に食すとアセトアルデヒドの分解が阻害されて酷く悪酔いするらしいが、ササクレヒトヨタケはその心配なく安心して食することが出来るということになっている。
しかし、過去に一回だけ、私はササクレヒトヨタケと酒を同時に摂取して気分が悪くなったことがある。
たまたまその個体がヒトヨタケ的な効果を持っていたのか、たまたま自分の体調が悪かっただけなのか。
そのときは随分裏切られた気持ちになったものだ。
それでも今でもササクレヒトヨタケを見つければ収穫して次の日に美味しい目玉焼きを楽しんでいるけどね。
青い鳥は身近にいるのかもしれない
アメリカのキノコ好きの間で春先に異様に盛り上がる話題、モレル。日本ではアミガサタケと呼ばれる。先の尖った形のトガリアミガサタケも含めてアメリカのキノコファンの間では珍重される。
高級食材店などでとんでもない値段で売っている価値の高いキノコだからということもあるが、何しろ生えているのを見つけるのが難しい。
あるところにはあるけれど、見つけようと思って見つけられるものではない。「モレルはどんなところにも生えるが特定の場所にしかない」と言われる。
つまり、深山にあって素人には絶対に見つけられないというほど見つけるのが難しいキノコではなく、幸運でさえあれば誰でも見つけることが出来るかもしれないという、ギャンブル性の高いキノコ。
キノコ採りの魅力は、見つけにくいものを探し回って見つけたときの喜びが大きいという”宝探し”に通ずるものがあると思う。
だから、一端そのキノコが「見つけにくいもの。見つけたら相当ラッキー」とマッシュルームハンター達の間に認識されると、熱がいっそう盛り上がるのではないか。
エノキの樹下に生えるとか、リンゴの木の下を好むとか、野火や山火事になったあとのような一度荒れた土地を好むとかいう情報が、半ば伝説の様にハンター達の間に語り継がれる。
無駄と知りつつ、春先にはそういう条件に合った所をついつい覗いてしまう。
一日いろいろ歩き回って、今日も無かったか・・・と肩を落とす。
ところが、日常、近所を散歩している途中に住宅地の植え込みの陰に無造作に生えていたりするんだな、これが。
更には、自分の住んでいるアパートの裏の駐車場の端にボコボコと生えてきたりする(上の写真)。
急いで部屋にとってかえし、カメラと収穫用のビニール袋を引っつかんで戻ってくるのだ。
アパートの駐車場の隅にしゃがみこんで写真を撮りまくり何かを大事そうに拾ってビニール袋に詰めている姿に近所の住民は変な人が住んでいると引くかもしれないが、幻のキノコを目の前にそんなことは構っちゃいられない。
ものの本にはバターが非常によく合うと書いてあるので、バター味のピラフに入れて食べてみた。
う~ん、ものすごく注意して味わおうとすれば舌に感じないでもない味だが、かなり控えめな風味。
不味くはない。確実に美味い部類のキノコ。しかしものすごく強烈に美味い!!というわけでもない。
やはり、モレルハンターを動かすのは、宝探し的な興奮なのじゃないかという気がする。
棘モジャ
ホコリタケの類は、だいたい食べられるので安心して採れるキノコだ。というわけで特にキノコ狩り初心者には人気なんじゃないかな。
英語ではパフ・ボールと呼ばれ、キノコ狩り初心者が嬉々として集めていることがある。
でも、ちょっと古くなって来ると、中が黄変してたりして、食用には向かない。
そういう段階になると、苦いとか、腹を壊すとか言われているようだが、そもそも、黄変した中身は食欲のわくものではない。
中がまだ新鮮かどうかは、皮を剥いてみないと分らなかったりするんだよな。
持って帰って調理をする段になって、皮を剥いてみてガッカリしたりして。
たまにちょっと先が曲がっている棘のような突起が前面に生えている外観の奴もいる。
こういう外装の巨大なビルディングとかあったらSFの世界っぽくて面白いだろうなぁと、いつも思ってしまうんだ。